第三部 資本主義の終わり

第二章 社会主義

資本主義社会の矛盾を、本来公的なものである資本が私的に所有され、私的に運用される結果、市場により調整されなければならないところにあると考え、資本の私的所有に代え国家所有を、市場経済に代え計画経済を採用したのが社会主義である。

それは、資本主義における後発国においてある程度の成功を収めたが、長続きはしなかった。社会主義は資本主義に取って代わるものとして期待されたが、そうではなかった。社会主義社会においても資本は温存されている。資本の所有者が資本家から官僚に代わっただけであり、計画経済は市場経済に及ばなかった。社会主義は、毛色の変わった資本主義である。それは、資本主義における後発国が、先発国に追いつくためのものとして、有用である。そして、それ以上のものではない。

資本主義社会の矛盾は、資本そのものにあるのである。

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