第三部 資本主義の終わり

第一章 カール・マルクス著『資本論』

資本主義については、マルクスにより明らかにされている。資本主義社会とは、人間の本来の生命活動である自然環境との物質循環が、生産手段を私的に所有する資本家の利潤追求として行われる社会である。
『資本論』は全三巻からなる大部の書物であるが、マルクスが完成させたのは第一巻のみである。第一巻と第二巻及び第三巻とに矛盾があるときは、第一巻を優先すべきものと考える。


一、価値

商品の価格の裏付けとなる価値とは、抽象的人間労働の結晶である。

二、再生産表式

資本主義社会の富は、商品としてあらわれ、商品の価値構成は次の通りである。

W(商品)=C(不変資本)+V(可変資本)+M(剰余価値)

不変資本とは機械設備、原材料等であり、これらの価値は労働により新たな生産物に移転される。V+Mは労働により新たに生産された価値部分であり、そのうち労働者に支払われた価値部分(価値を生み出す労働を行う労働力の対価)が可変資本であり、その残りが剰余価値として資本家のものになる。

三、相対的過剰人口

資本主義社会には、労働力市場という特徴的な市場が存在するが、そこでの需給関係は、生産力の発展に伴い、同一の商品を生産するのに要する労働が絶えず減少することにより、常に買い手(資本家)有利に保たれる

四、特別剰余価値

商品の価値は、平均により決定されるため、新たな生産方法等により、平均以下の労働量で商品を生産することに成功した資本家は、特別余分に特別剰余価値を手に入れることができる。特別剰余価値を求める資本の働きにより、資本主義社会では、絶えず生産方法が革新され、急速に生産力が増大する。

五、平均利潤率

利潤を目的とする資本家が関心を持つのは利潤率(C+Vを分母に、Mを分子にした式で表される)であるが、市場を通じた資本間の競争により剰余価値のやり取りが行われ、利潤率は平均化される。

六、景気の循環

資本主義社会においては、生産と消費が分離されていることにより、個々の資本家の競争による過剰な生産の行われる好景気の期間と、その過剰生産を調整する不景気の期間とが、否応なしに交代して現れる。

七、利潤率逓減の法則

生産力の発展により不変資本部分が増大し、利潤率は逓減する。

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